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某所でOSが正常に起動しないWaveRunner 6100を入手したので修理してみました.

はじめに

WaveRunner 6100(以下面倒なのでWR6k)は2004年製の100万クラスオシロであり,波形処理の土台としてOSにWindowsを搭載しています.

よって,HDDの寿命が来てしまうと波形取得機能は正常でもオシロとしての動作が出来なくなってしまうわけです.

この時代の高速オシロではWindows搭載というのが別に珍しい話では無く,TektronixのTDS7000シリーズやTDS5000シリーズはWindows 98SE(後に2000)を搭載していたり,HPのInfiniiumはWindows 98を搭載していたりしました.

このWR6kは2004年製ということで使用されているHDDは既に20年程度経過しており,正常に起動しないのはHDDが故障した為だろうと踏んで購入してみました.

事前リサーチ

インターネットでHDDが死んだ同型機はどうなっているのだろうと調べてみた所,様々な情報がヒットしました.

まとめると以下の通り

  • WR6kはDドライブにキャリブレーションデータを保管しており,入手したらまず先にバックアップを取るべきである1

  • (↑について)キャリブレーションデータはEEPROMにも保管されており,Xstream-DSO起動時にファイルが無かった場合は自動的にリストアされる2

  • OSは実は何でも良い(Home Editionを使う,Windows7にアップグレードするなども可)2

  • オシロ機能に必要なドライバはXstream DSOのインストーラに含まれるため,ファームウェアのダウンロードページにあるインストーラだけで事足りる3

  • 最近ファームウェア(Xstream DSO)のダウンロードが出来なくなった(真偽不明,ですが私もユーザ登録できていません.)3

  • WR6kとWR6kAの差はマザーボードぐらい(真偽不明)1

というわけで,Dドライブがレスキュー可能ならキャリブレーションデータを保管し,無理そうならば普通に諦めてOKだと分かりました.

つまり,HDDが完全に終了していた場合でも本機の場合はリカバー可能というわけですね.

いざ対面

事前情報ではCeleron 2GHzだと聞いていましたが,Pentium 4が入っていました.メモリも512MBぐらいかと思っていたら2GBも入ってました.日頃の行いのお陰ですかね(笑

しかも,嬉しい誤算でSATAが載っているボードです.折角SATA-IDE変換用意していたのに

ところでSATAが付いているのはWR6kAのはずでは?お前はいったい何者なんだ…

嬉しい誤算2として,この世代のマザーボードはUSBからブートできます.

USB DVDドライブも使用できたので助かりました(内蔵CDドライブは死亡)

といわけで,ギリギリHDDにアクセス可能なうちにUSBメモリからLinuxを起動して出せるデータは全て出しておきます.

最近の大手ディストリビューションはどれもこれもi686サポートが無くなりましたが,openSUSEは未だあるようなのでこれを使いました.

Windows側のパーティションが見えないので結構重傷な気がしますが,Dドライブはマウントする事ができました.

見えているうちに必要な物をレスキューします.

個人的には

  • Calibration
  • Install
  • Licenses

は絶対コピーした方がいいと思います.

一番上は先ほど述べましたが,InstallにはXstream DSOのインストーラが入っています. これは現在ユーザ登録が出来ない為あればなお嬉しいです.

Licensesに関しては,私の環境が何も入っていなかったですがもしかしたら追加のオプションが入っているかもしれません.

ちなみに,普通にコピーできてそうに書いていますが,dmesgにはHDDのエラーが出続けている状況です.

見えるファイルは見えるうちに全てコピーしておくと良いと思います.

復旧開始

必要なファイル達が揃ったので,復旧作業に取りかかります.

手順としては以下の通り

  1. SSDに換装
  2. 適当なWindowsをインストール
  3. Xstream DSOをインストール

SSDを入れる以外は普通のPCでやるのと同じです.

1. SSDに換装

WR6kのHDDは3.5インチのIDEドライブが使われており,SATAポートが無いマザーボードを引いた場合は変換アダプタが必要になります.

また,元々のディスクがマザーボードのトレイの下にあり,換装にはとんでもない手間が掛かります.

(奥からステーにネジで留められており,それを外す為にはマザーボードの取り外しが必要となります.)

そこで…

横着として,CDドライブの上に両面テープで貼り付けてしまいました.

これなら作業量は一気に減りますし,SSD程度の重量なら両面テープでも問題ないはず.

まずCDドライブを横から支える金属片を外します.

そしてSSDに両面テープを貼り付け,支えるための棒(その辺にあったスペーサー)を取り付けます.

ちなみにテープには3MのPREMIER GOLDなどという強そうな物を使用しています.

あとは棒を持ちながら奥へ持って行き,ペタっとして終わり.

配線を結束バンドで固めると…

意外とちゃんと収まります. 完全に固まるまで1日かかるそうですが,この時点で取れる気配はありません.

無事認識されました.

2. Windows XP Home Editionのインストール

本体にはProfessional英語版のキーが貼り付けられていますが,私は英語版Proのディスクを持っていないので手元にある日本語版Home Editionを用います.

地味に数年ぶりの使用です.

インストール自体に特筆する点は無いですが,パーティショニングを行ってDドライブを確保する必要があります.

また,Dドライブの名前は"USERDATA"にする必要があるようです.

加えてホスト名とユーザのセットアップをきちんと行う必要があります4

ホスト名は後ろのシールに書かれているLCRY~のシリアル番号で,ユーザは下の表通り.

役割 ユーザ名 パスワード
管理者 Administrator lecroyservice
一般 LeCroyUser (なし)

これ以外で設定した事が無いのでどう影響してくるのか不明ですが,おそらく正常に動作しないと思います.

なお,Home EditionではAdministratorのパスワードを設定するのに一手間かかります.

私は起動時にF8を押してセーフモードに入り,そこからコントロールパネルで設定しました.

追加のドライバはビデオとチップセットのみインストールしましたが,Intelからはダウンロード出来なかったのでインターネットから拾ってきた物を使用しました.

確かチップセットが https://driverscollection.com/?file_cid=40353880710dcc44b5b5076ee15 で,

ビデオが DELLの奴を抽出して使ったはずです.

(注意: 安全性は保証できないです)

なお,ビデオドライバは一回目にブラックアウトして強制終了後,再度インストールすると正常に通りました.

何が悪いのかは不明です.

3. Xstream DSOのインストール

これはただ実行するだけでOKです.

レスキューした物を実行して下さい.

Dドライブにキャリブレーションデータをコピーする前に一度実行しておくとEEPROMの物とHDDの物が両方取れてお得(?)かと思います.

動作確認

CAL信号を取ってる画像を忘れましたが,正常に波形を見る事ができました.

No Data Availableとか出る場合がありますが,それはSTOPになってるだけだと思うのでトリガを操作してみて下さい.

私はそれに気付かず焦りましたがAUTO SETUPを押した所自動的にAUTOに切り替わって気付きました.

終わりに

100万クラスのオシロを触る事ができて感動です…

DS1102Z-Eも持っていますが,レスポンスが比になりません.

液晶は年代だけあってかなり見にくくなっていますが,機能を考えれば全然耐えられます.

しかしめちゃめちゃ大きい…

余談

実は,これを買おうと思い立ったのはDS1102Z-Eのトリガ性能が著しく悪い為だったりします.

私の奴が壊れている可能性があるのであまり大声で言えないのですが,キャリブレーション信号ですらかなり高レベルに設定しないとトリガが掛からず流れてしまいます.

2022/12/19追記 故障疑惑がけっこうありますが,自己校正で一応使えるようになりました.

これが電圧によるものならば壊れてるのかなと納得がいくのですがそうでも無さそうで,電圧に関係なく1.2目盛りぐらいのところでトリガが掛かるのです.

つまりアッテネータを通した後の信号がADCの4ビット目ぐらいまではトリガが掛からない仕様なのかな?と思ったり…

正直これでは使い物にならないので買ってしまったわけです.

当然ながらWR6kでは一番下付近でもバッチリ動きます.

余談2

WR6kはPCIさえ接続出来ればあとはどんなマザーボード・CPUでも大丈夫なようです(?)

なので(WR6kに限らず)マザーボードを換装して性能アップを図る人はそれなりに見つかります.

しかしWR6kの場合最難関はAGPに接続された液晶への出力ボードです.

映像出力を行うには明らかに簡素すぎる気がする,というかレシーバらしきICがあるのみでグラフィック処理を行えるような要素は見当たりません.

おそらくですが,865チップセットではAGPに特殊な配線を行うとAGPスロット経由で内蔵グラフィックのTMDSなりの映像出力を受ける事ができるのかも?

LinuxではLaptop LCDとして認識していましたし,そういう仕組みがあるのかもしれません.詳しくないので断言できないですが…

なのでVIAチップセットなどを搭載したAGPのある775マザーボードなどは使えない気がします.

しかしながら,端子を見るとシンプルにLVDSの信号が出ているだけに見えますし,この並びはAliexpress等で売っているHDMI-LVDS変換ボードなどと互換性がありそうに見えます.

バックライトの処理など少し手を加える必要があるかもしれませんが,マザーボード交換は意外と簡単かも.