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PLEXのなんちゃってPCIEチューナを外付け化してみました。(過去記事)

はじめに

PLEXのチューナ(MLT5PEなど)は、通信インタフェースが汎用的なUSBなのにもかかわらず、(おそらく)電源を取るためだけにPCIEインタフェースを持ち、使用できる環境をデスクトップPC等のPCIE1xスロットを持つ物に限定しています。

通信をUSBで行っているということは、接続さえできればRaspberry Piといった省電力SBCやOpenWrtをインストールしたルータでも動作できる1事を示しており、せっかくの汎用性を台無しにしています。

そこで、外付けで接続できるように外付け化インタフェースの作成を行ってみました。

なお、実際に行ったのは2年前であり、今までノートラブルで動作していますので、使用しているパーツの信頼性の裏付けになっていると考えています。

注意喚起

冒頭を読んで、「ライザーカードを使えばよくない?」と考える方がいると思います。というか、実践している人をそれなりに見かけます。

しかし、そのライザー大丈夫でしょうか?アチアチになっていませんか?

マイニング用ライザーカードはグラフィックボードの駆動に特化しており、これらのチューナカードが要求する3.3Vを本気で供給する力を持っていません。それは最大3A流れるにもかかわらずリニアドロップレギュレータで3.3Vを生成している構造から明らかです。

(PCIEデータシート2より)

中にはきちんとチョッパ等で高効率な変換を行っているライザーもあります。この場合は問題ありません。しかしながら、大抵のものはLDOが載っているように思います。

加えて、実際に検証していないので確かとは言えないですが、PLEXチューナの12VはLNB電源を生成するためだけに使用されているという情報があります3

なので、12V供給を主として設計されたマイニング用ライザーをPLEXチューナに用いるのはやめた方がいいというのが私の意見です。

私も当初何も考えずにライザー運用しようとした一人なのですが、私の持っているライザーは12Vから5Vまで降圧チョッパで落とした後3.3VのLDOを入れる構成となっているにもかかわらず、数分使用していると触れないぐらいの温度になりました。

実機検証

実際にどれほど電流が流れているのか計測してみました。

計測環境

先ほど述べたライザーカードを使用し、12Vラインにテスターを割り込ませています。

ワニ口クリップの適当配線かつテスターは中華の無名メーカ製なので、値は参考程度にしてください。

計測結果

状態 12V測定値[A] 5V換算[A]
1CH使用時 0.169 0.406
5CH使用時 0.401 0.962

最大1A程度必要となるようです。

5VからLDOで3.3Vを生成する際には1.7Vの電位差があるため5CH使用時で1.6W程度のヒーターになるようです。

基盤は放熱性が高そうですしLDOもそれなりに熱容量がありそうですが、常時オンとなると前述のように触れないぐらい熱くなってしまいます。

外付け化

それでは、外付け化を行っていきましょう。

必要なもの

  • 12VのACアダプタ
  • 3.3VのDC-DCコンバータ
  • USBケーブル or USBコネクタ
  • (ボードを傷つけたくないなら)PCIEスロット
  • (ケーブルを切りたくないなら)ピンヘッダ
  • ケース

が必要です。傷つけてもよいなら必要なものは大幅に少なくなります。私はボードやケーブルに加工しない方針で行いました。

利用した物は次の通りです。

目的物 使用した物
12VのACアダプタ 富士通のタブレット充電器
DC-DCコンバータ 村田製コンバータ
PCIEスロット ライザーの切れ端
USBコネクタ 秋月かデジットで買ったDIP化基盤
ピンヘッダ 普通のピンヘッダ
ケース 適当なスチロールケース

工作

ぶっちゃけ、上記の部品を電気的につなげるだけなので、一制作例と見てください。

  • PCIEスロット加工

    配線はデータシート4にある+12Vと+3.3VとGNDだけでOKです。

  • ケース加工

  • 配線&ねじ止めして完成

おわりに

要望があったので(うれしい)2年も前のネタを引っ張り出して来てしまいました。

しかしながら、px4_drvのおかげもあって2年間メイン録画環境としてノートラブルで動作してくれています。

MLT5PEはUSBで動作できるマトモなチューナとして比較的希少な存在なので、ぜひ読んでくださった方もUSB接続性を生かして省電力録画環境を制作して欲しいと思います。

ちなみに私はラックサーバに気軽にカードが刺せないという問題点を外付け化で解決しています(省電力とは…)。

おわりに2

この記事を参考にして発生した如何なる損害や不利益に、私は一切の責任を負いません。


  1. 別チューナの事例:OpenWRTでもrecfriioが使いたい ↩︎

  2. PCI EXPRESS CARD ELECTROMECHANICAL SPECIFICATION, REV. 3.0 p44 ↩︎

  3. メルカリにある外付けキット商品説明より, https://jp.mercari.com/item/m57695397323 ↩︎

  4. PCI EXPRESS CARD ELECTROMECHANICAL SPECIFICATION, REV. 3.0 p86 ↩︎